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「プレイヤードール・カウントゼロ / イントロイトゥス」
 青いSNSで書いている「プレイヤードール」シリーズの前日譚、「プレイヤードール・カウントゼロ」の一編です。時間軸としては2085年頃、主役はもちろんアカイトです。



「プレイヤードール・カウントゼロ / イントロイトゥス」

 支倉は、黙々と「あいつ」の遺品の整理をしていた。「あいつ」の遺族は遺品の引取りを拒否したという。…いかなる理由があるかは知れなかったが。
「これは?」
 どうやら、古い音楽ソフトウエアらしい。そういえば、「あいつ」は音楽を趣味としていたが…
 何気なく起動してみる。
「おはよう、マスター。久しぶりの起動じゃね?」
 スピーカーから、主を失ったことを未だ知らない「それ」の声がした。

「支倉さん…やっちまいましたね…」
 呆れた声で、大原は呟いた。
「やっちまった、ってその言い方だと俺がまずいことをしたみたいじゃないか」
 支倉は、平然としたものだ。
「いや、まずいですよ、あれは…」
 大原の視線の先には、礼拝堂の床をモップがけするカソック姿の若い男がいた。年のころは22、3くらいだろうか。均整の取れた肢体に整った人種不詳の顔立ち、鮮やかな赤い髪が印象的だった。
「何がまずいっていうんだ。AIに人格と魂を認めるってのは、2081年のメキシコシティ公会議で決議されているじゃねぇか」
「建前は、ですよ。まだまだそういったモノに抵抗があるのは保守派に限ったことじゃないです」
「今までだって黙認されていたぜ?」
 赤い髪をした青年は、人間ではない。アンドロイドだ。ミサの時、賛美歌を「歌う」ことを任せていたプログラムAIに身体を持たせたのが彼だった。
「そりゃぁ、実体がないからでしょ。あくまで電子楽器扱いだったわけで。でもこうやって人を模した姿を与えてしまうのは、いらぬトラブルの元になると思いますね」
 溜息をつきながら、大原は言った。目の前の青年はぱっと見、不自然には見えない。しいて言えば、動きが目に見えて硬いことだろうか。
 これが世間に普及しているアンドロイドと同様に「どこか不自然」であれば保守派も「所詮は人形だな」と嘲笑して終るだろう。しかし彼には、どういうわけか「人間くささ」としかいえないものを感じる。これは、AIやアンドロイドを過剰に危険視している者からどう思われるだろうか。
「確かに、ここの教区は人手不足ではありますが」
 ずでっぺーん!
 大原の言葉は、派手な音に遮られた。床に赤毛の青年が転がっている。
「…さっきも、何も無いところで転んでませんでしたか…?」
「ああ、仕方がないさ。まだ身体になじんでいないんだ。これが、ボディと同時に作られた新品のAIならスムーズにいくところなんだが、あいつはAIのみの状態が長かったからな」
「はぁ…」
 赤毛の青年はよろよろと立ち上がった。
「おーいアカ、もう掃除終っていいぞ」
「駄目ですよ。全部終ってません」
 アカと呼ばれた青年は、モップがけを再開した。
「誰に似たんだか、負けず嫌いなんだよなぁ」
 苦笑する支倉に、大原は問いかけた。
「そういえば彼の名前は…?」
「ん? ああ、あいつはアカイトっていうんだよ」

 危なげな手つきでアカイトは急須から茶を注いだ。
「できたー」
 ほっと溜息をつき、「どうぞ」と大原の前に湯飲みを置いた。
「あ、どうも」
「アカ、こいつは大原っていう川崎の教会を担当している奴だ」
「そうですか。アカイトです、よろ」
 ごっ。
 鈍い音がした。挨拶をしながら頭を下げたら、勢い余ってテーブルの角に頭をぶつけてしまったのだ。
「うー」
「ま、しょうがねぇな。昨日よりは転ばなくなっているんだから、気にすんな」
 アンドロイドとしてのアカイトが起動してから、まだ一週間足らずなのだという。
「ま、何はともあれ支倉さん、彼にそんな格好をさせている以上、大教区への報告とか彼への洗礼とか、後回しにすると余計面倒になることはさっさと済ませてしまう方がいいんじゃないですかね」
「そうなんだよなー。…アカ、ちょっとばかし嫌な思いをするだろうが、お前をここに置いとくためだ。しばらく我慢しろよ」

 それから一ヶ月程の間は、やるべきことが多すぎた。
 結果として、「さっさと済ませた」のは功を奏したといえた。リアルボディに不慣れなお陰で動きが硬かったので、さほど危険視されなかったのだ。そして彼は、正式に助祭として登録されることとなった。
 さて、どうしているだろうかということが気になった大原は、本牧の教会に足を運んだ。すると、真っ先にあの鮮やかな赤い頭が目に入る。
 彼は、一心に花壇の手入れをしていた。
「こんにちわ、アカイト君」
「あ、こ、こんにちわ」
 不意に声をかけられて、アカイトは驚いたようだ。ごく自然に「驚く」という反応を示したことに、大原は内心脅威を感じた。
(本当に、ヒトのようじゃあないか)
「えっと、大原さん、これ…俺が稼働してから蒔いた種なんだけど…芽が出ました」
 アカイトの指し示す先には、双葉が開いたばかりの苗がいくつか生えている。
「よかったね。これからもがんばって育てて、花が咲いたらまた見せて下さいね。…ところでアカイト君、支倉さんはいるかな?」
「はい! ええと、マスターなら…」
 へちゃっ。
 立ち上がろうとしたアカイトは、そのままバランスを崩して花壇に倒れこんだ。
「あぅあぅあー」
「…アカイト君、支倉さんを呼んでくるのは、着替えるついででいいですから。玄関で待ってるから、ね?」
 大原が思わず幼い子供に言い聞かせるような口調になってしまったのは、彼の表情があまりにも悔しそうで悲しそうで情けなさそうだったからだった。

 アカイトの茶を淹れる手つきは、まだまだ危なっかしいものの、一ヶ月前よりはずっとスムーズといえた。
「アカイト君、上手になりましたね」
「へへっ。ありがとうございます」
 褒めると、満面の笑みを浮かべた。
 台所へ姿を消したアカイトを見送りながら、大原は呟いた。
「支倉さん、最初は「何だあれは」「やっちまったな」と思ったんですが…こうして接すると、人間の子供を見ているような気持ちになりますね」
「ああ。予想以上に、子育てをしている気分になってるよ」
 そして、支倉はいささか沈んだ口調で言った。
「大原、あいつの口調なんだがな…あれ、奴の本来の口調じゃねぇんだ。本来はもっとこう砕けた…いわゆるタメ口ってやつでな」
「リアルボディになって、他人行儀になったということですか?」
 支倉はかぶりを振った。
「いいや。俺がマスターになってからだ」
「って、支倉さんの前にマスターがいたんですか…そういえば、古いプログラムだとか何とか言ってましたね、以前」
「そうなんだ。…知り合いの「遺品」でな。俺が貰っちまったんだが…そいつの死を知らないときにはタメ口だったのに、俺が元のマスターじゃないと知ってからは、何年も経つってのにあんな感じなんだよ」
「支倉さん…まだ彼は、「心を開いていない」と言いたいんですか…?」
 そんな表現を使ってしまったことに、大原は自分でも驚いていた。しかし、アカイトの言動や支倉の話をきくと、そうとしか言いようがない。
「うん、まあそんなところだ」
 支倉はあっさりと認めた。
「ぐぉっ!」
 ふいに、支倉が悶絶した。台所から戻ってきたアカイトが、力いっぱい体当たりをする勢いでしがみついてきたのだ。支倉が、その長身に見合った体格……「熊のようだ」と皆から言われている……でなかったら、そのまま倒れていただろう。
「違う! 違うんだよマスター!! …俺、俺はただ、タイミングがわかんなかったっていうか…いきなり普通の口調になったらかえってわざとらしいかなって思っただけなんだよ…あんたのこと、嫌いじゃないよ! ………大好きだよ!」
 アカイトが叫んだ後、その場にしばし沈黙が降りた。それを破ったのは支倉だった。
「…すまんな、気を使わせて」
 その大きな手で、わしわしと乱暴な手つきで、しかし優しくアカイトの頭を撫でた。
「支倉さん…やっと、本当の「親子」になれましたね」
 ごく自然に、大原の口からそんな言葉が出てきたことに彼自身が驚いていた。
「…そうだな…」
 支倉はアカイトを抱き締めた。
「ちょ、マスター苦しいってばよぉっ」
 しかしアカイトの声は、どこか嬉しそうだった。
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【2009/05/27 15:52】 | 二次創作 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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酒とカレー粉の日々


酒と辛いものを愛するヲタクな劣等遊民・紅沙まみみ(あかしゃ・?)のダラダラな日々。酒とカレー以外では、峰倉かずや作品・チャンピオン系作品・魔法先生ネギま!とVocaloidの話題が多し。

プロフィール

紅沙まみみ

Author:紅沙まみみ
 紅沙は「あかしゃ」と読ませます。
 酒と辛いものが好きな劣等遊民。初めてBL萌えしたのは幼稚園の時、「宇○鉄○キョー○イ○」を観て、という筋金入りのダメ腐女子。
 心の広い配偶者と息子2人(愛称は仔豚ちゃん)に恵まれるも、ダメ人間っぷりに変わりはなく。
 好きなビールはヱビス。煙草はアークロイヤル。一応清水エスパルスのファン。最近ではすっかりニコ厨。
ツイッターID:m_akasya

連絡等は mamimiあっとlive.jp まで。

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